引きこもりの若者支援

かつては、引きこもりといえば、何らかの精神疾患を抱える方などへの医療的観点からの支援でしたが、この10年で引きこもりの定義も常態像も大きく変わりました。
「困難な状況にいる普通の人」という精神科医の斎藤環医師の言葉は、引きこもり当事者の間でもコンセンサスを得ています。
町田市では、保健所が引きこもりを所掌しておりますが、第一窓口が保健師となっていたり、医療モデルに沿った支援となっております。
精神疾患を抱える方など医療的な支援が必要な引きこもり者にとっては妥当だとしても、それは本当に一部の引きこもり者しか捉え切れていないと考えています。
多様な困難を抱える方や支援ニーズが明確ではない方がもっと気軽に相談できる引きこもりの人に特化したいつでも立ち寄れる居場所を地域に設置することを求め伺います。

1.市で行っている本人グループの現状とあり方について市の考えを問う

回答
保健所の引きこもり支援といたしまして、保健師等の医療専門職による面接や家庭訪問等の個別の相談支援と、当事者が参加する本人グループまたご家族に参加いただく親グループのグループワークによる支援等を行っております。
このうち、本人グループにつきましては、社会参加の足掛かりとなるように、参加者と一緒にプログラムを考えながら、おおむね週1回実施しております。
2023年度の実績といたしましては、年間42回実施し、実参加者数は3名、延べ参加者数は109名であり、この他に正式なメンバーになる前の見学や体験の方がおります。
本人グループの次のステップとして、就労支援機関や福祉機関等につながりグループを卒業する方もおりますので、その時々により参加人数には増減がございます。
本人グループの参加に当たりましては、保健師等による継続的な個別支援を通じて本人のニーズや目標を確認し、主治医等の意見も踏まえながら、本人にとって適切なタイミングで参加できるように努めております。当事者は自宅以外で安心して外出できる場所、また社会につながる第一歩としての活動場所と認識しております

再質問

国の引きこもり出現率を勘案すると町田市内でも何千人と引きこもりの方がいることになりますが、市の当事者グループは実参加者数3名とのことでした。
保健所で行っていただいている医療的な側面からの支援以外にも何らかの支援が必要だと考えております。国の引きこもり支援推進体制立ち上げ支援補助事業の活用を拡大して、本人グループ以外に常設の居場所を設置したり専門チームを配置してはいかがでしょうか。

回答
町田市では、国の補助制度である引きこもりサポート事業を活用いたしまして、相談支援や本人グループのほか、地域の支援機関との連携構築のためのネットワーク作りなどを実施しております。
また、保健所では保健師のほかに精神保険福祉士や臨床心理士が電話相談や面接訪問等を行っております。
また、必要に応じて精神科医による専門医相談を活用するなど様々な職種による支援を実施しております。

再質問

様々ご答弁いただいたんですけれども、要約すると、すでにやっているので新たに何かすることはないというふうに理解したんですけれどもでは別の角度から質問をいたします。
国では、子ども若者育成支援推進法で子ども若者総合相談センターの設置を努力義務としております。
子ども若者総合相談センターでは、家庭や学校、職場などで抱えてしまった悩みや不安について、子ども若者本人やそのご家族からどんな相談にも応じています。
町田市でも子ども若者総合相談センターの設置を検討してはいかがでしょうか。

回答
子ども若者総合相談センターは、子ども若者が自立した生活を送ることができるように支援することを目的に、社会生活を営む上で困難を抱える子ども若者の相談に応じ、関係機関の紹介その他必要な情報の提供、助言を行う施設であり、子ども若者育成支援推進法に定めがございます。
子ども若者総合相談センターの設置は努力義務となっており、多摩26市における現在の子ども若者総合相談センターの設置状況につきましては、八王子市、府中市、調布市の3市が設置していることを確認しております。
町田市では、18歳を超えた若者の相談先として、保健所による心の相談や引きこもりの相談、生活援護課による就労準備支援事業、また町田福祉〇ごとサポートセンター堺及び鶴川で実施している福祉に関する相談対応といった若者も対象とした相談事業等において相互の連携を図っており、相談者のニーズ等に合わせ、困りごとの解決に向けた支援体制を構築しております。
子ども若者総合相談センターの設置につきましてはすでに設置し運営している自治体の手法や効果等を参考に研究してまいります。

2.現状把握のために引きこもりの実態調査アンケートを実施してはどうか。

回答
町田市と法政大学との協働研究「町田市における地域コミュニティの未来について」の一環として、2024年8月から9月にかけて実施した地域コミュニティに関する市民アンケートの中で、引きこもりに関する質問を行っております。
具体的には、引きこもりの状態にある方の年齢や、ご家族が引きこもり状態にある方にどのような支援を望むかなどの質問項目があり、この結果は現在集計中でございます。
また、東京都では令和5年度引きこもりへの認識に関する世論調査を実施しております。
この調査では、自身や家族に引きこもりの状態にある人がいるかの問いに、同居問わず家族にいると回答した方が約5%でした。また、引きこもり支援に対する行政への要望では、当事者と家族への継続的なサポートを望むと回答した方が54%でした。今後、町田市で実施した地域コミュニティに関する市民アーケードの結果や、東京都が実施した調査結果などを参考にしてまいります。

再質問

先ほどご答弁いただきました地域コミュニティに関する市民アンケートから今回得られた引きこもりの人数の把握や引きこもりの当事者やご家族がどのような支援を必要としているかという回答は、これまで家庭に閉じてしまっていたことに対して非常に大きな一歩というか、貴重な情報になります。引きこもりに関してさらなる現状把握をするために今後詳細のアンケートを実施してはいかがでしょうか。

回答
現在、保健所といたしまして引きこもりに関するアンケート調査を実施する予定はございませんが、保健所では保健・医療・福祉・教育・就労などそれぞれの専門分野の関係機関から構成されます引きこもりネットワーク会議などを通じて、引きこもり当事者に関する情報を収集しておりますので、その情報をもとに引き続きそれぞれの方に合った支援を行うよう取り組んでまいります。

意見

東京都のアンケート結果とか、地域コミュニティに関するアンケートを、是非、引きこもりネットワーク会議でも共有いただければと思います。
お隣の八王子市では一昨年、八王子居場所づくりネットワークが発足いたしました。
実態調査や居場所づくりを行っていて、会議には公的な機関や民間団体だけでなく、当事者や家族もメンバーとして参加しているそうです。
町田市の引きこもりネットワーク会議でもぜひ当事者や家族の方のご参加の検討をお願いしたいと思います。
また、支援のあり方は様々なんですけれども大事なのは引きこもり当事者の方が人生って捨てたもんじゃないと思えることだと思います。
その実感が持てた方は、自ら自分たちの道を歩み始めます。
町田市内で引きこもりの若者を支援しているNPO法人ゆどうふで行っているわらしべワークプロジェクトでは、引きこもり当事者が地域活動に参加して、地域の担い手として頼りにされる存在になっております。
今、引きこもり支援は大きな転換期となっています。

医療モデル以外の支援を検討することをはじめ、わらしべワークプロジェクトのように引きこもり当事者を支援される人という視点を超えた存在として捉え直すことや、こういった実践から得られたことを生かしていただくことを要望いたします。